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2017.12.30

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桐島かれんさん“おもてなしのルール”で疲れない、楽しい宴をつくる

桐島かれんさん“おもてなしのルール”で疲れない、楽しい宴をつくる

聡明な女は、料理がうまい。

招く側も、招かれる側も疲れない、楽しい宴を作れることが、すてきなおとなである証し。母から受け継ぎ、桐島かれんさんが自分流に仕立てたおもてなしのスタイル、その流儀を聞いた。 

 

母は仲間と集まって、リラックスしながら、食事やおしゃべりを心ゆくまで楽しむ“場”を作ることが、とても好きで上手な人です。
『聡明な女は料理がうまい』の中に、こんな一節があります。

〈いま中年の働きざかりになった彼女たちとのつきあいぐらい、私にとって楽しいものはない。私たちは宴会が好きだ。もちろん料理屋ではなく自宅によんだりよばれたりして、手料理でもてなし合うのが、女仲間の常識である。(中略)なにしろ表現力の旺盛な連中だから、わざわざ人をよぶからには、ヨソではとてもお目にかかれないような大ごちそうを作って驚かさなければ気がすまないのである。〉 

これって、今でいう女子会ですよね。本が刊行された1976年当時は、女性が家に人を呼ぶなんてあまりなかったのではないかと思います。そんなときに母は時代を先取りして、パーティをよく開いていました。
母が人を招く日は、わたしたちは子ども部屋に閉じ込められちゃうんです。そして、お客様全員が揃う夜7時頃になると、子ども部屋から出ていって、「長女のかれんです」とご挨拶をしなければならない。「失礼します」と一礼して子ども部屋に戻ると、それからはずっと、おとなたちの楽しい時間。母が腕によりをかけて作った料理も、わたしたちは食べさせてもらえなかった。だからかえって、まだ見ぬ“おとなの世界”に憧れました。
今のわたしには、母のそんな流儀がわかります。子どもがいると、女の人はどうしても“ママ”になってしまうから。ひとりの女性、ひとりの人間として仲間と語らう時間は、魂が解放されるような自由なひとときなのです。 

 

料理は得意な人におまかせ。
ホステス役に徹します

おもてなしのルールとして、わたしが大事だと思うのは、ホステスとしての意識をちゃんと持って、台所に立ちっぱなしにならないようにすること。
そのために、料理は得意な人におまかせすることが多いです。私も母も料理上手な友だちがたくさんいます。
たとえば私には、築地マニアの友人がいて。彼女はニューヨーク在住ですが、日本に来ると一緒に早朝の築地へ買い物に行って、そのままうちでパーティをする。白身魚の昆布じめのような、純然たる和食を、彼女はいつも10品以上作ってくれます。わたしはそれに合う食器を出したり、花を活けたり、テーブルセッティングをする係。

今回の葉山での宴は、『ハウスオブ ロータス』のスタッフのダンナさんに料理をお願いしました。フレンチのシェフである彼も、お休みの日には快く料理を引き受けてくれます。ジャンルを問わず作れる人なので、メンバーや季節に合わせて献立を相談して、おもてなしのテーブルを一緒に作る。そういう共同作業も勉強になるし、楽しいんですよね。

 

宴の準備をする
静かな時間が好きです

お料理をおまかせできれば、わたしはホステス役に集中できます。お客様がいらしたら、まず、ダイニングルームとは別の部屋にシャンパンとカナッペなどを用意しておき、そこへご案内する。ゲストが揃うまでの間、くつろいでもらうのです。アルコールが入るので、初めて紹介する人どうしでも、この時間で和やかなムードになってくれます。
食卓に着いてからも、うちは大皿料理から取り分けるスタイルなので「このお料理と、そちらのお料理をそろそろ交換しましょう」とか「ワイン、足りてます?」とか。みんなが食べられているか、話しているか、楽しんでいるか、常に気配りをしています。
それでも疲れたりしないのは、みんなにも結構、働いてもらうからかもしれない。わたしはプロデューサー体質なので「これ、テーブルに運んでください」「暖炉に薪をくべてもらえますか」と人に自然にお願いしているのです。頼まれると、人って意外と悪い気はしないものなんですね。むしろ、自分もその場に参加している感じがあって、楽しんでくれるみたいです。とにかく、ひとりでなんでもやろうとしない。料理をはじめ、みんなに参加してもらって、その場を全員で楽しむ――。これが、わたし流のおもてなしのスタイルと言えそうです。

個人的には、やっぱり部屋や食卓をしつらえることが楽しみ。母同様、“場”を作ることが好きなんです。まず、なくてはならないのはお花。花はふだんからよく活けていますが、お客様のときは、さらにすてきに活けたい。まったくの自己流ですが、ホテルのロビーなどですてきなお花を見ると目に焼きつけたり、時には写真に撮って、自分でもやってみる。プロじゃないから無理……とは思わない。やってみれば案外うまくいきます。

それから香りも大切。玄関や居間などの数ヵ所にお香を焚きます。香りには、その場の空気を変えてくれる力がある。見慣れたわが家も、お香を焚くことで、ハレの場になってくれます。
きれいにアイロンのかかった布類を用意することも、あらたまった気分になって好きです。テーブルナプキンを用意したり。スワトウ刺繡のハンカチにアイロンをかけて、洗面所にお手ふきとして重ねておきます。
そうして準備をするときの、静かなワクワク感がたまらなくて。だから、おもてなしが好きで、みんなでよく集まっているのかもしれません。

 

「カナダ・バンクーバーにある母の家のダイニング&キッチンで。2015年のこのときは、3姉弟の家族がほぼ全員集まって、カナダでバカンスを過ごしました」

 

 

■Profile

桐島かれん
きりしまかれん
『ハウス オブ ロータス』クリエイティブディレクター。1964年、作家の桐島洋子さんの長女として生まれる。モデルや女優、歌手として活躍し、1993年に写真家の上田義彦氏と結婚。22歳を筆頭とする4児の母。文庫化された『聡明な女は料理がうまい』(文春文庫)では、表紙のモデルやアールデコ風のイラストを担当し、「この本にいろいろ教えてもらった恩返し」をした。

 

 

『おとなスタイル』Vol.10 2018冬号より
撮影/上田義彦 撮影協力/大間芳浩 取材・文/白江亜古

著者プロフィール

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