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2017.04.13

買う学ぶ

“日本の風景”に出会う旅 珠玉の本6冊

“日本の風景”に出会う旅 珠玉の本6冊

日本の風景に出会いませんか
本で始まる日本旅

20代で世界中を巡り、今も国内外をさすらい続ける写真家の藤代冥砂さんが、旅へと誘う、珠玉の本6冊をご紹介します。

 

北海道

阿寒に果つ

渡辺淳一 著 中公文庫 ¥680

20年前、阿寒で自殺した少女画家、時任純子。高校時代、札幌で純子に恋した作家の田辺は、同じく彼女に翻弄された男たちを訪ね歩く。渡辺淳一の若い頃の姿を投影した初期代表作。「たとえば自分が学生時代に体験した恋愛の面影を物語に重ね、なぞってみたり。旅で目にする北国らしい風景も、どこかに置き忘れてしまった遠い記憶をくすぐるはずです」

 

岩手

春と修羅(『宮沢賢治詩集』より)

宮沢賢治 著 谷川徹三 編 岩波文庫 ¥760

生前に刊行された唯一の詩集。「宮沢賢治が子どものときから足繁く通い、教員になった後も生徒たちを連れてよく登った岩手山は、彼の芸術的発想の素になった大事な山。この詩集は、そこで目にした自然現象や深い内省から生まれてきたものだと思います。賢治の詩を読み返しながら、岩手山をはじめ東北の山歩きを楽しんでみてはいかがでしょうか」

 

神奈川県 逗子

草迷宮

泉鏡花 著 岩波文庫 ¥500

5人の死者を出した、秋谷(現在の横須賀市秋谷)の無人の屋敷が舞台。幼いころに聞いた手毬歌の手がかりを探す葉越明がそこで目にしたのは、次々と起こる怪奇現象だった……。「以前秋谷に事務所を構えていたことがあり、思い出深い場所。逗子駅からバスで30分、観光地の喧噪から離れて小説世界に浸り、自分だけのオリジナルな時間を過ごせますよ」

 

京都

陰陽師

岡野玲子 著 夢枕獏 原作 Jets comics白泉社 ¥771

式神を操り、時に怨霊をも鎮める最強の陰陽師・安倍晴明が、平安の都で起こる様々な事件を解決していく漫画。「すごく絵がきれいなので、当時の都の様子や人々の服装が立体的にインプットされ、想像力がいっそうかき立てられます。京都には飲食や文化など、楽しみ方はいろいろありますが、この本を旅の切り口にしてみるのも面白いと思います」

 

香川

空海の思想について

梅原猛 著 講談社学術文庫 ¥640

哲学者である著者が、密教思想の魅力を解き明かす名著。「空海の思想は現世肯定、つまりこの世を楽しもうよ、ということだと捉えているのですが、僕はそこがとても好きです。おとなになればなるほど、その前向きさに、ある意味勇気づけられると思います。真言宗開祖である空海の考えを知ったうえでお遍路を旅すれば、心からリフレッシュできます」

 

長崎

沈黙

遠藤周作 著 新潮文庫 ¥550

島原の乱収束後の日本で、苛酷な弾圧に屈した外国人宣教師たちの葛藤を描く。「宗教とは関係なく、『神様って、本当にいるの?』と、誰しも必ず一度は考えるもの。長崎、そして五島列島まで足を伸ばして、そんな普遍的なテーマについて思いを巡らせるきっかけに。とくに五島列島は、近々世界遺産に登録されるかも。旅するなら、今が狙い目です」

 

物語を手がかりに“迷う”のも、
おとなならではの旅の醍醐味 ―藤代冥砂さん

旅とは新しい地図を自分で作るようなもの

20代の頃、自身の放浪について記した詩人・金子光晴の本を読んでバックパックで世界一周したり、太宰治を読んで三鷹に玉川上水を見に行ったりと、振り返れば、本はいくつもの旅のきっかけになってきました。

今回ご紹介した泉鏡花の『草迷宮』の舞台になった逗子も、本の世界をたどりながら巡ると、都心からあれほど近くても、「すごく遠くまで来たなあ」という気分に浸れます。ちなみに今、私は沖縄で暮らしているのですが、最近日本橋の界隈を訪れると、自分のなかで「江戸」の風景が立ち上がってくるんです。日本橋はかつて水運の文化が栄えた街。水を足許に感じながら、外から見えないように覆われた暗渠の上を歩くのも、私にとってまさに“旅”なんです。
一方、全国から人の集まる関東と違い、関西は土地に根付いた文化や暮らしを強くイメージさせる場所。とくに京都は時間的な層の厚い街ですので、電車やクルマによる横軸の旅に飽きたら、岡野玲子の漫画『陰陽師』で想像力をかき立て、今度は縦軸、つまり時間を行き来する旅をしてみてはいかがでしょうか。

旅とは、自分のなかで新たな地図を作るようなものだと思うんです。歴史や建築、食など旅のテーマによって、それぞれ違う地図が生まれてくる。ただずっと同じ視点で旅していると、そのうち飽きてきてしまうもの。
おいしい店巡りをしたら、次は素敵な食器を探してみるとか、テーマを広げるきっかけを自分で見つけられると、いくつになっても旅を楽しめると思います。
その一つの手助けとなるのが、本。ガイドブックから離れ、物語を手がかりに寄り道してみると、知らない路地に入り込んで思わぬ景色に出会えることもある。ときには道に迷うのも、旅の醍醐味。本を片手に、大いに“迷って”みませんか。

 

■Profile
藤代冥砂さん
1967年生まれ。写真家、小説家、ヒーラー。写真集に『ライドライドライド』『もう、家へ帰ろう』など。ウェブマガジン『NeoL』でエッセイ連載中。電子書籍型雑誌『THETHE』クリエイティブディレクターも務める。

 

 

『おとなスタイル』Vol.1 2015秋号より

著者プロフィール

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