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2017.02.17

学ぶ

小さい家こそ取り入れたい!広さの出し方

小さい家こそ取り入れたい!広さの出し方

中庭の光と玄関の影で、ドラマチックに奥行きを演出

テーマは「陰翳礼讃(いんえいらいさん)」

玄関を開けると、ほの暗い入り口の向こうに、中庭の白い壁と光だまりが、目に飛び込んできた。
「玄関は明るく、と考えることが多いですが、僕はあえて照明を絞り、暗くしています。昔から、谷崎潤一郎の『陰翳礼讃』が好きで、光と影のコントラストを活かしてみたかったので」

三井ホーム商品開発部の竹田さんは、建築学科出身。33歳の時、自分で自宅を設計した。新商品を開発する部署だけあり、日々、あらゆる建物にアンテナをはっている。
「レストランやホテルに入って気持ちいいなと感じると、なぜ自分が心地いいのか、その理由を必ず探っています。照明か、配色か、家具のサイズか……。デジカメで撮影して、高さや空間を測って。だから、カメラとメジャーは僕の必需品なんです(笑)」
そんな経験から生まれたのが、こだわりの「中庭」。光と影の玄関演出も、この中庭あってこそのワザだ。
「僕にとって豊かな空間とは、実際の広さ以上に、心理的な“拡がり”を感じられることにあります。個室をあえて狭くしたり、減らすことで、ゆとりの空間をつくったり。また、見落としがちですが、人間が根源的に心地よいと感じる光や風、緑は、拡がりを持たせたい小さい家こそ入れたほうがいい。 

我が家の中庭は玄関、居間、和室のどこからでも、緑と光が見える設計。しかも段差もなく出入りできるので、敷地以上に拡く見えるんです。
中庭には、水音と清涼感がほしくて、シマトネリコの木を植え、水盤をつくりました。朝も帰宅後も、水面を観るだけで和むので、大満足です」

ダイニングから中庭、和室まで、段差なく移動可能。「娘が小さい頃、ぐずったときはこの葉っぱをさわらせると、泣き止んだんです」

 

すべて見える、より少し隠すほうが広く見える

リビングとダイニングを仕切る腰壁に、棚をつくった竹田さん。「ホームセンターで買った木と、自分で色を塗った柱を組み立ててみました」 抜け感がある棚に、緑を添えて、気持ちよい空間が完成。

玄関から中庭に抜ける目線には、3本の格子に短めの暖簾をかけて、「ほどよい目隠し」を。白いリビングも、棚を入れて、やはり「目隠し」。
「すべて見えるよりも、ほんの少し隠すほうが広く見えるんですよ」

谷崎の『陰翳礼讃』を意識してつくった、玄関スペース。入り口の思わぬ仕掛けが、来客への嬉しいおもてなしに。自分で調達した白い玉砂利と石畳がやわらかいアクセント。 

 

トイレは、階段下のスペースに。洗面とは区切らず空間を有効活用。
「南の島の水上コテージで観た洗面を、再現しました。ガラスに釣り糸で鏡を浮かべ、開放感を足して。窓の前に植えたヒメシャラの木が、新緑、紅葉と季節感を出してくれます」

南国コテージ風のトイレは、洗面と一体化させて広々と。紫のひも暖簾がアクセントに。

敷地がないなら五感で勝負。それこそ本当の“贅沢な家”に違いない。
 

竹田さんの「広く見せる」4ヵ条

①あえて玄関を暗く。光だまりの中庭との対比が目の錯覚で奥行きをうむ

②すべて見える、よりもちょっと隠すほうが「拡がり」効果が出る

③家の中心に、光と緑と水のたまる中庭をつくり、開放感を出す

④階段下をトイレに有効活用。洗面と間仕切りなく広々した印象に

 

37坪、3LDKの2階建て。「家のどこからでも自然を感じられる家にしたかった。一番のこだわりは中庭。ここからすべての配置を決めました」。33歳当時の住宅論と建築論が目いっぱいつまった、竹田さんの処女作。

 

 

『おとなスタイル』Vol.5 2016秋号より
取材・文  編集部

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