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2017.03.01

出かける

心の港「K-port」南果歩さんが見た気仙沼の繋がり

心の港「K-port」南果歩さんが見た気仙沼の繋がり

私が通う場所、大切に想うこと。

女優・南果歩さんが、これまで何度も通ってきた場所があります。
宮城県の北東端、複雑に入り組んだ湾をもつ美しい港町、気仙沼。そこでは、人と人とをつなぐ縁、「おかえりなさい」の言葉、喜びも悲しみも包み込むような明るい笑顔が待っていました。

“K-port”って、知っていますか?

2013年11月、俳優の渡辺謙さんと南果歩さんが、気仙沼の人たちと内湾地区に作ったカフェ。設計は伊東豊雄さん。靴を脱いで上がるスタイルで、くつろげるうえ、子どもも安心して床で遊べる。メニューはコーヒーなどの飲み物から、ピザ、カレー、パンケーキまで多彩。渡辺さんからは、毎日手書きのファックスが店に届く。

 

 

5年前に避難所で生まれ、今も続く温かな縁

午後、可愛らしい訪問客が、K-portの扉を開けた。陸前高田で暮らす菊池さん一家の里歩ちゃん(5歳)と、郷平くん(7歳)だ。クレヨンで画用紙に書いた手紙を、南さんに少し照れ臭そうに渡す。

南さんがやってきたと聞き、陸前高田から駆けつけた菊池さん一家。
7歳の郷平くんは、K-portのTシャツがお気に入り。

 

「わあ、ありがとう! 里歩ちゃん、絵がとっても上手だねえ。郷平くんは、字がすごくきれい!」

上は里歩ちゃんが、下は郷平くんが南さんのためにクレヨンで書いてきた、可愛らしい手紙。テレビなどで南さんの活躍を目にするたび、2人とも大喜びするそう。

 

震災の後、南さんが避難所を訪ねた際、当時妊娠中だった菊池静さんに毛布を手渡したのが、縁の始まり。2ヵ月後、無事に産まれた女の子に、静さんは南さんの名前から1字を取って、「里歩」と名付けた。以来、南さんが菊池さん宅に遊びに行ったり、南さんの舞台を菊池さんが東京まで見に行ったりと、温かな交流が続いている。「私は里歩ちゃんたちの、遠くに住んでいるおばさんのような感覚なんです」とうれしそうに笑う南さん。キッズスペースで南さんと楽しそうに遊ぶ里歩ちゃんたちを笑顔で見守りながら、静さんは言う。

「安全なところで思いきり遊ばせてあげたいけれど、今は近所に公園もないし、校庭も狭いままです。街が再生していなくて。その原因の一つは、仮設住宅から出ていける人がまだ少ないこと。みんなが自分の家を持てれば、この子たちも校庭で遊べるようになる。そのときが本当の復興なのかなと思います」

K-portを出て街を歩くと、いたるところで「果歩さん、おかえりなさい!」と大歓迎される南さん。仲良しの女性から、ちょうど今から、マグロ漁船の「出船送り」があると聞き、急遽港に向かった。

 

出船送りに立ち会い、大漁旗で別れを惜しむ

出船送りとは、出漁する漁師たちを家族や友人が見送り、大漁と航海の安全を願う伝統行事。1年間の漁に出る「第三十八漁福丸」は、食糧や燃料は洋上補給するため、港には一切立ち寄らない。軽快なマーチが流れ始めると、見送る人々に混じり、南さんも片手で色鮮やかな紙テープを握りしめ、もう片手で大漁旗を懸命に振る。その傍らで、出航する祖父を思って昨日からずっと泣いているという孫娘、24年間夫を見送り続ける妻などが寂しげな表情を見せる。

紙テープと大漁旗で、長い別れを惜しむ家族や知人の姿に、南さんの目も潤む。K-portのピザの名前「ケープタウン」「マダガスカル」は、世界の漁港にちなんだもの。

「出航する漁師さんも見送る家族も、言葉には出さないけれど、お互いを思って別れを惜しむ情景が、ぐっと胸に迫りました。男たちは家族のために過酷な漁に出かけ、女たちはそれを見送り、夫の留守の間、互いに助け合う。そうやって、家族のような濃い横のつながりが、この土地には生まれていくんですね。人と人とが深く結びついている気仙沼という港町の基盤はここにあったんだと、少しわかったような気がしました」

 

 

K-port
住所/宮城県気仙沼市港町1-3
TEL/0226-25-9915
営業時間/10:00~19:00
定休日/なし

 

■Profile
南果歩
みなみかほ
女優。1964年、兵庫県生まれ。'84年、映画『伽倻子のために』で主演デビュー。以降、映画やドラマなどで活躍中。今年5月から再演された主演舞台『パーマ屋スミレ』は、大きな話題に。夫は俳優の渡辺謙さん。

 

 

『おとなスタイル』Vol.5 2016秋号より
撮影/若木信吾 スタイリング/中井綾子(crêpe) ヘア&メイク/山崎順子(SOUP) 取材・文/いなもあきこ

 

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著者プロフィール

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